初ネタ見せ!!漫才師としての第一歩。

コンビ結成後、

 

僕は1本目のネタを作るために全力で挑んだ。

 

家に閉じこもって、

 

何度もネタを練っていた。

 

授業もネタができるまでは休んだりしていた。

 

相方には授業も出なあかん。と言われていたが、

 

「ごめん。どーしても早く完成させたくて」

 

と断っていた。

 

2週間くらいかかって、ようやく納得できるネタが完成した。

 

そして、相方にネタの台本を見せた。

 

自分の書いたネタを人に見てもらうことは、

 

とても緊張した。

 

台本を見てもらっている間の時間はすごく長く感じた。

 

読み終えた相方が、

 

「良いやん。」

 

「おもろいやん。」

 

と言ってくれた。

 

めっちゃうれしかった。

 

テンションがあがりながらも、早速ネタの読み合わせをした。

 

すごくかみ合わなかった。

 

だけど2人とも、

 

「これ練習したら結構いい感じになるやん」

 

と前向きだった。

 

それからネタ見せの授業に合わせて練習の日々が始まる。

 

主に近所の公園で、何度も何度も練習した。

 

ネタをなかなか覚えてこなかった相方に、

 

きつく怒ったこともあった。

 

それだけ初めてのネタ見せには気合が入っていた。

 

そして、当日。

 

朝も公園でしっかり練習してから、2人で学校に行った。

 

教室にはすでに生徒がいて、ホワイトボードが用意されている。

 

ネタ見せの時間が近づくとそのホワイトボードに各々コンビ名を書いていく。

 

ネタを披露する順番を書いていく、ネタ順だ。

 

僕たちはなるべく最初の方にやりたかったから、5番目くらいを選んだ。

 

全員で18組ほどエントリーしていた。

 

時間になると構成作家の先生が来て、席に座った。

 

「じゃ、お願いします。」

 

と1言つぶやくと1組目がネタをし始める。

 

2分間という短い時間の中で、考えてきたネタを披露する。

 

「どーも、ありがとうございました。」

 

と漫才を終えると、先生から指摘を受ける。

 

「あそこはどういう意味だったの?」

 

「声が小さすぎる。」

 

「ネタフリがいちいち長すぎる。」

 

その場でしっかりアドバイスをもらって、終了となる。

 

続いて2組目、3組目とネタ見せをしていく。

 

自分たちの順番が近づくにつれて、緊張感も高まってきた。

 

でも僕は、緊張より気合が勝っていた。

 

心の中で、

 

「やってやる」

 

と何度も繰り返していた。

 

いよいよ僕たちの番。

 

立ち上がりセンターマイクの位置まで移動する。

 

その時、相方を見たら顔がこわばっていたので

 

「たのしもう!」

 

と耳元でささやいた。

 

「うん」

 

と相方が返してくれた。

 

僕は一呼吸おいて、

 

「はいどーも」

 

と元気よくネタを始めた。

 

練習通り、しっかり声を出して、ボケの強弱もつける。

 

セリフも間違えないように気をつけた。

 

序盤のボケでクスクス笑い声が聞こえた。

 

「これは行ける。」

 

と思いながら、丁寧にネタを進めた。

 

中盤から終盤にかけての畳みかけの部分でも、笑い声が聞こえた。

 

僕たちは必死になってネタをやり続けた。

 

やっていく中で、

 

「うわっ、スゲー楽しいな!」

 

「まだネタを続けたいな。」

 

と思うようになっていた。

 

初めての感覚だった。

 

自分の作ったネタで、人が笑っている。

 

しかも相方と2人で笑わせている。

 

そう思うと楽しくて仕方なかった。

 

「どーも、ありがとうございましたー」

 

僕たちは2分間のネタをやりきった。

 

先生からのアドバイスをもらい、席に戻る。

 

席に戻ったとき、相方の方を見てグータッチをした。

 

相方も嬉しそうな表情だった。

 

そして授業が終わると、同期から

 

「すごかったよ!」

 

「ちゃんと漫才できてたし、笑いも来てたよ。」

 

と言われた。

 

めちゃくちゃうれしかった。

 

帰り道、相方に

 

「今日どーやった?」

 

と聞くと、

 

めっちゃ楽しかった!」

 

「最初は緊張してたけど、徐々に楽しくなってた。」

 

「もっとネタを続けたかったなあ」

 

と嬉しそうに話していた。

 

僕と同じ気持ちだった。

 

今まで生きてきた中で喜びを人と共有できるのが、

 

こんなにうれしいことだなんて思いもしなかった。

 

いつもの帰り道が、この日は最高の帰り道になっていた。